ソガイ

批評と創作を行う永久機関

掌編小説「彼女」

「彼女」 恋人はいないし、作る気もない。周りにはそういっている。 二次会の誘いを断った帰り道、駅から家の間に立つ五十五本の街灯、その五十本目は、この町に移ってから五年の間、ずっと不規則なリズムで白と橙の光の点滅を続けている。四十五本目を過ぎ…

「宵野春琴伝」~『春琴抄』所感~

その回数をしっかりと数えたことはないが、私がいままで一番多く再読した小説作品は、おそらく谷崎潤一郎の『春琴抄』である。 私のことを知っているひとからはしばしば驚かれるのだが、私の谷崎との付き合いは、時間からすればわりと浅い。大学には入って初…

迂回すること 分からないことを嗜好すること 教養とは何か

本論では教養という言葉について論を進めていく。どうしてわざわざ教養などと言う古臭くて、衰退している概念について考えるのか。その点について訝しむ読者もいるかもしれない。 確かに教養という言葉が古臭さを帯びているのは事実である。竹内(2013)は大学…

その一冊から ~私の文フリの経験に寄せて~

何度か宣伝もしてきたとおり、先日、第二十五回文学フリマ東京に参加してきた。大学時代のサークルの仲間が集まって出した冊子は、なんと、刷った分が完売した。嬉しいことである。ソガイのフリーペーパーも、予想を遥かにこえて多くのひとに手に取ってもら…

掌編小説 『遊具』 雲葉 零

『遊具』 蜂の巣状のように、あるいは安普請の集合住宅のように部屋がびっしりと詰まって区切られている。部屋の仕切りは合板で、殴れば壊れるようなちゃちなものである。周囲を見渡すと、左右それぞれに階段があり、上下に続いている。階段もやはり合板でで…

文学フリマでフリーペーパーを配布します

11月23日(木祝)に開催される第二十五回文学フリマ東京で、ソガイのフリーペーパーを配布します。借り猫文学会という同人サークルの一角を間借りさせて頂く形で。だいたい字数は二万字ぐらいになりそうです。 ブースはA-17に決定しました。フリーペーパーの…

たまにはこんなコミックレビュー HERO『雨水リンダ』

おそらく最近では、『ホリミヤ』の原作『堀さんと宮村くん』のひととして有名であるHEROだが、私とHEROの出会い、というか付き合いは、現在単行本として第9巻まで出ている『HERO個人作品集』が主である。このひとの作品、きみに合っていると思うよ、と友人…