ソガイ

批評と創作を行う永久機関

たまにはこんなコミックレビュー HERO『雨水リンダ』

おそらく最近では、『ホリミヤ』の原作『堀さんと宮村くん』のひととして有名であるHEROだが、私とHEROの出会い、というか付き合いは、現在単行本として第9巻まで出ている『HERO個人作品集』が主である。このひとの作品、きみに合っていると思うよ、と友人…

書評 ジョン・アーヴィング『ピギー・スニードを救う話』

異端者 ジョン・アーヴィング 著者ジョン・アーヴィングは現代アメリカ文学の旗手である。『熊を放つ』、『ガープの世界』、『サイダーハウス・ルール』など日本でも有名な作品が多数ある。ちなみに『熊を放つ』 (中公文庫) の翻訳者は村上春樹である。アー…

「小説の筋」論争からみた、芥川と谷崎

最近、『文芸的な、余りに文芸的な/饒舌録ほか』(講談社文芸文庫)という本が出た。 言うまでもなく、芥川龍之介と谷崎潤一郎との間に起きた「小説の筋」論争に関連する文章を編纂した本である。私はそれなりの時間をかけて、この「小説の筋」論争について…

書評 『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』 水島宏明

内側からのテレビ批判 この本は凡百のマスコミ批判本、マスコミを批判する言説と、少々趣が異なる。著者の水島がテレビの内側の人間、テレビマンを経験しているからである。水島の経歴は以下の様なものだ。 1957年北海道生まれ。東京大学法学部卒業。札幌テ…

アメリカ禁書ランキングトップ10 2016年度版 後編

ランキング一位 「This One Summer」を読んで 一位の「This One Summer」をKindleで購入して読んだ。そもそも同作が禁書になった理由を振り返ろう。LGBTの人物が登場し、薬物が使用され、不敬*1で、「大人びたテーマと相まって性的に露骨」だと考えられたか…

『デレマス』独断と偏見に基づいた映像論的なもの 後編

4 光と影――期待と不安―― もっともこれは映像の世界においては常套手段といえるものであろうが、『デレマス』も数多の映像作品の例にもれず、光と影の対比がところどころで用いられている。場面として明るいシーンでは全体的に明るく、シリアスなシーンでは…

『デレマス』独断と偏見に基づいた映像論的なもの 中編

2 彼女たちが中央に立つとき 注意してみれば意外なほど明確でありながら、しかし意識していないとそうそう気づけそうもないのであるが、第一話において、人物が画面の中央に立つ場面は、実はそれほど多くない。 例外的に、シンデレラガールズのメンバーが『…